マイナーながらも、魅力溢れるイシダイのカカリ釣り

イシダイと言えば磯釣りの対象魚とみられがちなんですが、ところがどっこい、沖釣りでもけっこう釣れるんですよね。イサキ釣りやハナダイのコマセシャクリ、マダイのコマセ釣りなどでよく掛かり、鋭い引きでツリオヤジを驚かせてくれる魚です。

ところが、イシダイ専門で狙うってケースは少ないです。船宿は数えるほどで、剣崎、毘沙門、鴨居、茅ヶ崎がその拠点。昔は出していたけど、今はやらなくなった、という宿もあります。専門に狙う場合は、極先調子の2m前後の竿に片軸もしくは両軸リール、オモリは20号から25号、これにハリス10号15cmに伊勢尼針をつけて、カラス貝を餌に釣るという方法です。専用竿の市販も極めて少なく(プラスワンから2モデルあり)、竿は丈夫なカワハギ竿などで代用することになります。 出船宿の少なさといいタックルの希少さといい、マイナーな釣りといっていいでしょう。

 ※左の写真はコマセダイの外道で釣ったものです^^;。

さて、こういうマイナーな釣りをものともしないのは、はまゆう軍団OEC。今年2回ほど仕立に便乗させていただくことができました。このカカリ釣り、鴨居ではやったことあるんだけど、いまだ本命イシダイは釣ったことなし、7月29日、やっとイシダイを3枚あげることができました。

船宿は毘沙門の金長丸、剣崎沖へいざ出発。餌は港の生簀に置いてあるカラスガイ、これ、わざわざ横浜まで獲りにいくそうです。釣り人はおのおのが貝剥きを手に、船上で貝をむきむき釣りをします。カラス貝はちょっと危なげな風体なんすが、それもきにせずにせっせと殻をむきます。この貝が柔らかくて魚の食いが抜群、外道のベラ、チョウチョウウオ、カサゴ、カワハギ、キタマクラなどにも大人気。あっという間に餌がとられます。仕掛け入れてからちょこちょこっというアタリがあったらもう餌は無い。せっせと餌を向いて、餌をつけかえて、仕掛けを入れ替え続けて本命のイシダイのアタリを待つという根気のいる釣りです。休む暇ないす^^;。

本命イシダイのアタリは餌取りに比べて明確です。カツッときます。次の難関がアワセのタイミング。バシコン即合わせなら私は比較的得意とするところなんだけど、そうではない。食い込ませる、というかツリ(釣針のことなんだけど、金長丸はじめ何人かの船長はこう呼ぶんでここではツリと書きます)が口の中に入るまで待たないといけない。最初にかじったときがコツッ、その後に餌を口の中に入れ、ツリが口にあたったところで、アタリが変化します。コツッ、コツッ、クィッ、てな感じ。このクィッで合わせます。言葉で書くとこんな感じなんですが、実際にはかなり微妙な変化になります。

さて、この微妙なアタリを取るためには、常に糸を張っていなければいけません。さらに、オモリは絶対に底から放さないことが鉄則です。カカリ釣りのため、潮をもろにうけるので、オモリは流されます。オモリが潮で流されるのに追従しながら、糸を張ったままアタリを待つわけです。

この釣り方だと、大切なのは竿の調子。まず、穂先が柔らかいこと、これでオモリを底に着けたまま糸を張ります。これはスミイカ釣りと全く同じ。なのでスミイカ竿のような極めて先調子で穂先が柔らかい竿がアタリを取るまでは適しています。あと、あわせたときにがっちりと針を掛けるためには穂持ちの強いもの、さらに手持ちで釣るために軽いもの。これらの要件から、カワハギ竿で代用する人が多いです。さらにもうひとつ、丈夫なことも必要。合わせた瞬間の衝撃はでかいですし、この時折れないように丈夫なものが必要です。私はイシダイ専用竿を持っていないので、鴨居シャクリに愛用している今は亡き(笑)Mamiya-OPの20B-180という竿を使いました。この竿、過去にかなり荒っぽい使い方に耐えてきた竿で、キロ半のマダイの上顎を貫通させたり、2キロ半のアオリの乗りを受け止めたりと、丈夫で長持ちの竿でした、が、この日はイシダイにこの竿が折られた…^^;。代用するには感度を犠牲にしても、もうちょっと胴に掛かる調子(カワハギ竿)の方がよかったかもしれないですね。

竿が折れるのは、肘を中心に回転させるからです。普通の釣りのように、竿を持ち上げるように合わせて唇にかけるのではなく、穂先を跳ね上げてツリをイシダイの顎に貫通させる必要があります。どうしても竿には負担が掛かります。もし、高価な和竿でこの釣りをやろうという人がいればやめた方が無難でしょう。

さて、この日は朝からいい感じで潮が流れてて、私の竿に待望のアタリがきました。コツッ、微妙なアタリにちょっと間を置くと、さらにコツッ。二度目のちょっと大きなアタリで反射的にあわせてました。小気味よい引きで上がってきたのは小型のシマダイ^^;;。小さいながらも本命のアタリがわかったのが大きいです。次のアタリ、これも明確にイシダイとわかります。合わせると竿がギュンと絞られて、上がってきたのは最初のよりちょっと大きめ、27,8cmというところでしょうか。あわせが決まった時の快感は沖釣りの中ではトップランクです(^^)。続いてのアタリは途中で針ハズレ、しっかりツリが刺さらなかったようです。

で、いよいよクライマックスの竿折り^^;。ツン、ツンと断続的なアタリが続き、クィッと引き込んだところでバシコーン!とあわせました。完璧!と思った。しかし、耳元でボキッという音とともに手から重量感が抜けてきました。あちゃー、竿折っちゃった…。糸を取ると重みがあるので、手で手繰ってあげたのはジャスト1kgのイシダイ。合わせの衝撃からはもっとでかいサイズかと思ってたんで、このサイズには意外でした。しかし、嬉しいキロクラスです。

以降、船長から竿借りて続け、一度魚を掛けるもバラシ。竿を折るのが恐くてしっかり合わせ切れなかったのが原因でしょうか^^;。まあ、3枚釣れて今日は満足な釣果で道具を仕舞いました。この日の釣果は船中4枚。

さて、このイシダイなんですが、とにかく旨いんです。白身ながら、脂の乗りがたっぷり。三枚に卸して皮を引くと、包丁には脂がべっとりになります。身は硬いですが、歯切れは良いです。私の一番好きなタイプの身質です。身はしゃっきりとした歯応えの刺身、頭やカマは旨味溢れる焼き物、中骨とアラはダシが濃い潮汁にと、キロ級が一枚あれば充分に楽しめる魚です。旬としては梅雨時に釣れる奴が一番旨いと感じますが、盛夏から秋の魚もまた旨いです。

コマセダイなどでは嬉しい外道のイシダイですが、専門に狙うカカリ釣りではさらに嬉しい本命魚となり、大満足ないちんちでありました(^^)。

 成魚になると縞模様は薄くなり、口の周りが写真のように黒くなります。 クチグロと呼ばれるのはこのためです。イシガキダイの場合はこれとは反対に、口の周りが白くなり、クチジロと呼ばれます。

2001.8.18 Yasuhiro Ii

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