こぶ付きマダイは優良マーク

みなさんの中で、釣ってきたマダイを捌いていると尻尾に近いところの背骨にこぶができている魚が混じったことはないでしょうか?
下記の写真がそのこぶです。

 このこぶのできる原因ははっきりしていません。すべてのマダイにあるわけでもないし、地域による格差もまだわかりません。写真の骨は、2002年8月25日に第三海堡で釣った3.2kgのものです。私がこぶ付きのマダイを釣ったのは、松輪瀬、瀬ノ海で、今回の第三海堡で三場所目になります。小型のマダイにはこのこぶはなく、小さくとも1.5kgのもののようです。

 魚屋さんに聞いてもこのこぶについてはっきりしたことはわかりませんでした。ただ、明石から入ってくるマダイの中には、やはりこれと同じこぶを持ったマダイが含まれるようです。

 ひとついえることは、このこぶを持ったマダイは、「良質のマダイ」だということです。身の締まり具合や透明感、そして食味がこぶを持たない同サイズのマダイと比べて優れているように私は感じています。


 

 かつて、北大路魯山人は彼の著作「明石鯛に優る朝鮮の鯛」の中で次のように述べています。「たいについて、京都、大阪で、子ども自分から聞きこんでいることは、玄海灘を通過してきたたいではくては美味くないということだ。玄界灘を通過してきたたいには、その骨にイボのような珠みたいなものができていると聞かされた」(中公文庫・魯山人味道、より引用。初出は不明ですが、昭和七年の文章なのでおそらく「星岡」(星岡茶寮の機関紙)でしょうか)。ここでは美味い鯛として、玄海灘以東の鯛をあげていますが、これにはで骨のこぶがあると言っています。魯山人は関東の鯛の味について記した文章がないため、はたして東京湾や相模湾の鯛を彼がどう思っているのかは不明ですが、こぶのあるマダイは良質(美味い)という点では、私が釣った魚と一致します。

 このこぶを持ったマダイはその海域に居ついているものか、あるいはどこかからか回遊してくるのかは不明です。ひとつ言えるのは、写真のマダイを釣った第三海堡は浦賀水道の近くて東京湾の中では干満差による潮流が激しいところです。明石や佐賀関を例に挙げてもわかるように、潮の流れが速く餌が豊富な海域では、マダイに限らず魚の味はよくなります、栄養と運動を十分にとっているせいでしょう。特に鴨居沖のタイといえば、ツリオヤジの中ではブランド品であり、コマセ禁止のうえ昔ながらの漁師が一本釣り(立て釣り)を営んでいる海であり、その味は一級品であることは広く知られています。こういう条件が、こぶを持ったタイを生む源になっているのかもしれません。

 これが骨にこぶを持ったマダイです。 8月なので産卵後でお腹はへこんでいますが、ピンと張って背ビレまで届く勢いに速潮の中で育まれた雰囲気を感じます。

 ※左写真: 2002/8/25 野毛屋での一枚(3.2kg♀) 釣場:第三海堡北40m(3.2kg♀)

 

 こぶを持ったマダイを捌いたら、ぜひその身質と味に注意してみてください。きっと同サイズのマダイとはちょっと違ったものだと思います。もしそれがキロ半くらいのサイズであれば、食べ頃サイズの目の下一尺にも負けないくらいきめこまかな身で、脂の乗りも絶妙な極上のマダイかもしれません。

2002/8/27 Yasuhiro Ii

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