のっこみ雑感

「のっこみ」は、漢字では「乗っ込み」と書きます。春から初夏にかけて、魚が産卵行動のため浅場に生活圏を移動する行動のことを言います。バス釣りなんかでは「スポーニング(spawning)」と呼びますが、spawnはそのまま「産卵する」という意味です。

で、沖釣りオヤジが「のっこみ」というと、ほぼ100%近くはマダイの産卵をさします。ほんとうは、アオリイカだってアコウだってシロギスだってショウサイフグだってクロダイだってのっこみはあるんですが、それでもマダイの「のっこみ」だけは特別な思い入れがあるのでしょう。私もその気持ちはよくわかります。

なんで「のっこみ」がもてはやされるか?理由はいくつかあると思います。ひとつは「浅場で釣りやすい」こと。冬の間、深い場所でじっと春を待っていたマダイ達は、産卵のために浅場にきます。冬場はあちこちの根に散っていいたのが、デートスポットというか、異性との出会いを求めて(?)浅い場所にやってくるわけです。人間の世界でもそうですが、この出会いに適した場所は一部の人気スポットに限られます。これがのっこみ場と呼ばれるところです。これが各地にあります。そういうポイントは、のっこみ狙いの釣り人で賑わうわけですね。

さらに大型が多いのも特徴です。秋冬は大型は深い場所にいる傾向があります。それだけ遊泳力が強く、水圧にも耐えられるからでしょうか?この大型が浅場にくる、もとから浅場に居着いている中小型と合わせて釣れることも人気のひとつでしょう。

また、真子、白子の食味が挙げられます。のっこみ時に釣り上げたマダイの腹は、真子や白子でぱんぱんになっています。これを食べる人間とは残酷と思うこともありますが、それでも美味には勝てない^^;。自然への感謝の気持ちを込めて美味しくいただくことにしましょう。

一部メディアでは、「のっこみ」について間違った記述をたまに見かけます。「食いが悪いとみた船長は深場100mにポイント移動。これが大正解。3kgの乗っこみダイが食ってきた」、それはまだのっこむ前のタイです^^;。「潮の流れよく○○沖でタイが入れ食い状態、いよいよのっこみだ」その○○沖ってのは地付きのタイの釣り場です^^;。春に釣れればなんでもかんでものっこみダイかというと、それは違います。あくまでも、産卵のために浅場にきたタイのことを指す言葉です。

さて、こののっこみダイを狙うのに、釣り人はあの手この手のテクニックを駆使して攻めます。一年でもっともマダイ釣りに気合が入る時期でしょう。のっこみは決して数釣りの時期ではありません。数で言うなら、秋の越冬前の方がでます。のっこみは浅場で大型が連発するのが特徴なのです。それだけに難しく、また、夢のある釣期といえるでしょう。

と、書いている私といえば、今年ははや2回狙いましたが、マダイの顔は見られるもののいずれも地付きの魚たちで、のっこみモードのマダイはまだ釣っていません。これからのっこみ後半戦に突入します。季節物だけになんとか型をみたいと思う今日この頃であります。

2001/5/7 Yasuhiro Ii

 

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