船竿のオモリ負荷表示をどう見ればよい?

 古今東西よーく聞かれることに、船竿のオモリ負荷表示があります。例を挙げると、30号負荷のコマセダイ竿に80号のオモリを使う、これって折れないの?大丈夫なの?というような質問です。これを説明するの、けっこう大変なんですよね…^^;

まずは竿のスペックを表わすパラメータの説明

 釣り竿は千差万別。数え切れないくらいの種類があります。それらスペックの違いを表わすには、いくつかのパラメータがあります。その中で、はっきりわかるのは3つ、長さと重さと太さです。長さと重さは正確に計測できるものなので、これはわかりやすいでしょう。太さは穂先から竿尻まで変化するのですが、先径と元径(ブランク部分のもっとも太い箇所)を表わすことが多いです。

 さて、それ以外に「調子」と呼ばれるパラメータがあります。先調子、胴調子という呼び名を聞いたことがあるでしょう。さらに、硬さ(軟らかさ)というパラメータがあります。調子は竿の曲がり方を表わしていていて、「テーパー」と呼ばれることもあります。硬さは文字通りその竿が硬いか軟らかいかを表わすものです。

 さらに、素材の特性によるパラメータがあります。それが反発力です。竿が曲がってから戻るまでの強さのことです。反発力が強いとピンピンしているように感じ、弱いとグンニャリしたように感じます。「アクション」と呼ばれることもあります。

 最後に、重心の位置も竿の特性を決めるパラメータになります。同じ重さの竿であれば重心が遠いと竿が重く感じ、近いと竿が軽く感じます。モーメントという値で表わすことがあります(がまかつの場合)。これは、竿の自重×竿尻から重心までの位置の値で、持ち重り感を表わす値になります。

 これらのパラメータをまとめてみます。

パラメータ 説明
長さ 竿の長さ。3.3m、7'6"、などの表示
重さ 竿の重さ。320g、などの表示
太さ 先径と元径を表わす場合が多い 1.8/23.0mm、などの表示
調子(テーパー) 曲がり方。先調子、胴調子、7:3調子、などの表示
硬さ(負荷表示) 曲がりやすさ。30号負荷、20LBS、などの表示
反発力(弾性、アクション) 曲がった後の戻りかた。スローアクション、ファーストアクション、などの表示
重心 重心の位置。モーメントなどの表示(ほとんどのメーカーは非公開)

 なんかいろいろあってややこしく感じるかと思いますが、本題に入る前に、これらのパラメータの意味をぜひ理解してください。

錘負荷は硬さを表わす数値

 さて、本題に入ってみましょう。釣竿のパッケージには、「オモリ負荷30号」とか「オモリ負荷20〜60号」の表示があります。釣りを始めようとする人は「ああ、この竿は30号のオモリを使えばいいのだな」とか「この竿は20〜60号のオモリが使えるのだな」というように解釈します。これはごく自然な解釈のしかただと思います。

 この解釈は、ほとんど正しいのです。しかし、例外があります。この例外がユーザーを混乱させる原因になります。次に、錘負荷をそのまま解釈して良い例、悪い例をあげてみます。悪い例という表現を使っていますが、厳密に言えば「錘負荷表示以上の錘を使用する例」ということになります。

錘負荷をそのまま受け取って良い例

 SHIMANOの2002年のカタログから数値を引用してみます。

幻波カワハギS180  1.8m  135g  1.0/19.0mm 20〜25号

ここで、20〜25号という数値が錘負荷です。これは20〜25号を使えば、この竿のパフォーマンスが十分に発揮されると考えてよいでしょう。カワハギ釣りは常に竿を手持ちにし、カワハギからの微妙なアタリをとる釣りです。この釣り方が後で関連しますので覚えておいてください。

錘負荷をそのまま受け取って悪い例

 ちょっと古いのですが、SHIMANOの1994年のカタログから引用してみます。

ARGOS真鯛SP30号330 3.3m 245g 2.0/22.5mm 20〜40号

 これはいわゆる30号負荷の真鯛竿の例です。錘負荷は20〜40号とありますが、実際にはコマセダイでは60〜100号の錘を使います。なぜでしょうか?

 コマセダイは置き竿で釣る方法が主流です。置き竿にする場合は、船の揺れを吸収するために、竿にある程度負荷をかけて曲がった状態(錘負けの状態)にして使う必要があります。これをしないと、波の揺れによって仕掛けが跳ねてしまい、アタリを待つのに都合が悪かったり、魚が食った瞬間にばれやすくなったりします。

 このケースは表示が間違っているわけではないのです。あくまで、この竿の硬さは30号相当だといえます。しかし、使い方(釣り方)が特殊なせいで、錘負荷表示と、実際の使用錘とで差がでるわけです。

 つまり、釣り方によって、錘負荷表示以上の錘を使う、言い換えれば軟らかい竿にあえて負荷をかけて使うことになります。

 こういう使い方していいの?という疑問に対しては、OKです。という答えになります。もともとコマセダイの竿はコマセを振るときの負荷に耐えられるようにある程度丈夫に設計されています。また、胴調子のため、錘の重さを竿全体で吸収するようになっています。なので、30号のところを80号使っても強度的には問題ありません。(メーカーによっては強度不十分の竿もありますが、最近の竿はほとんど問題ないでしょう)

改善されている錘負荷表示

 ただし、これらの表示でユーザーが混乱したのは過去の例になりつつあります。メーカーの方でも、その竿の使用方法にあった錘負荷表示にするようになってきました。また、硬さの表わし方も、30号、50号といった錘負荷表示から、L,M,Hのような表記に替えた製品も増えています。SHIMANOの2002年カタログから、コマセダイ用の竿を見てみます。

海攻マダイLimitedS270 2.7m 280g 2.2/21.5mm 50〜80号

 この竿ではすでに品名に錘号数表示はありません。代わりに、硬さを"S"という表記にしています。また、錘負荷も50〜80号と、釣り方に合った使用錘の号数が書いてあります。ARGOS30号と海攻Sは時代こそ違いますが、ほぼ同じような硬さ(むしろ海攻の方が軟らかい)と捉えてもらってよいです。海攻の場合は、表示されている錘負荷の号数を使えば良いことになります。これならばユーザーは迷うことはないでしょう。

 このように、メーカーによっては錘負荷表示が実際の使用錘にあったものもありますが、すべてというわけではありません。今でも、竿の品名に号数表示を使っている竿も多く残っています。

もうひとつの表記、ポンドテスト表示

 泳がせ竿に多い表記で、ポンドテスト表示があります。30LBS、80LBSといった表記です。これはもともとトローリングロッドで使われていた表記で、使用するラインの強さに対応した竿の硬さの表示です。ただし、トローリングは道糸の強度にあわせてドラグ調整をきっちり行うのに対し、泳がせ釣りは竿のポンドテスト表示以上の強度のラインを使うケースが多いため、数値をそのまま使用するラインの強度にあわせることはできません。

 これもあくまで竿の硬さを表わす目安と考えた方がよいです。

 また、アリゲーター技研のように、使用可能なハリスの最大号数を品名にしているケースもあります。(例:スーパーバトル80-230)

メーカーによる差、シリーズによる差も考慮にいれる必要あり

 30号、50号のような錘負荷表記、あるいはS,M,Lの表記は、メーカーごとに差があります。A社の30号モデルと、B社の30号モデルは同じ硬さとは限りません。また、同じメーカーでも異なります。A社のαシリーズという竿の30号モデルと、A社のβシリーズという竿の30号モデルでは、硬さが同じとはやはり限りません。

 これは、メーカー、あるいはシリーズが異なると、調子や弾性が異なるため、すべての竿を同じ硬さ表記に統一することが困難なためです。

結論:現状では経験で判断するのがベストの方法

 長々と書いてきましたが、結論としては、竿は様々なパラメータを持つため、使用可能な錘を一元的に特定することは困難、ということになります。自分で使ってみて判断する、あるいは経験のある人に聞く(釣具屋の主人、釣り仲間など)のが、ベストな判断方法でしょう。

 例えばコマセダイをとっても、釣り方に個人差があり、80号錘を使うために適した竿は違ってきます。積極的にコマセを出して短期勝負をかけるのであれば硬めの竿、置き竿でコマセを長く出すような戦法であればそれより軟らかめ。また、自分がよく行く釣り場が静かな海であれば硬め、外海なら軟らかめ。ハリスを細くするために軟らかめ。外道狙いを重視するか軽視するか。さらに、硬い軟らかい以外に、調子は、弾性は、長さは、重さは、などなど。あれこれ悩んで、試して、自分がしようとしている釣りにぴったりとフィットする竿をみつけるのも、釣りの楽しさのひとつではないかと私は考えます。

2002/10/04 Yasuhiro Ii

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