鴨居といえばエビタイ - 雑誌記事風で紹介します^^;  鴨居/きよし丸  2005/05/28

「エビでタイを釣る」、釣り人なら一度は聞いたことがあるだろうこの言葉が実践されるのが鴨居沖のマダイだ。

 鴨居のエビタイが始まった。キロ前後のマダイの型が出始め、きよし丸では23日には3.5kgが上がった。鴨居のマダイ釣りはコマセを使わず活きエ ビ餌のみを使う。軽い道具でマダイとのスリリングなやりとりが魅力である。さっそくきよし丸に電話を入れた。

 電話に出た小田船長は、「それほど釣れていませんよ…」と、弱気なコメント。型が見られない日も多いせいだが、それは承知の上。活エビ餌のマダイ釣りは潮具合に左右される。アタリもなく終わる日もあるハイリスクハイリターンの釣りである。しかし、一度この釣りでマダイの引きを味わうと、例えボウズの結果になろうともまた行きたくなる魅力を持っているのだ。

 この釣り、一昔前は「鴨居シャクリ」と呼ばれ、多くのファンが存在した。彼らは、タイはエビで釣るのだ、というこだわりが強かった。また、釣果のみに左右されず、釣りのプロセスにこだわるベテラン達だった。当時ビギナーだった私は、鴨居シャクリの先輩達から多くのことを学ぶことができたと思う。

活きエビの付け方にはたくさんの種類がある。これは頭を縛る方法。鴨居では最もポピュラーな付け方だ。

 時が流れ、現代ではコマセ釣りのマダイが全盛になっている。多くの入門者はコマセ用タックルを揃え、各地のマダイ場へ赴く。鴨居のエビタイは時代の流れに置き去りにされている感が強い。

 5月28日、好天の土曜日にも関わらずきよし丸に訪れた釣り人は私だけ。「出ましょうか。僕も竿を出しますから」と小田船長。図らずも大型船での大名釣りになってしまった。

2号のマメテンヤ。赤いのは餌を縛るゴム紐。

船長と話し、「今日は大型狙いでいきましょう」ということにした。船はまず久里浜沖80mダチを目指した。この時期に大型が出る場所である。「74m伸ばして」の指示がでた。これは、海面から中オモリまでの長さである。道糸のメーターマークで棚を合わせ、10秒に1回ほど竿をしゃくって誘いを入れる。後はアタリを待つだけで、食わせるまではさほど難しくないのがエビタイの特徴である。

 2時間ほど久里浜沖を攻めたがアタリはなし。「潮が動かない。剣崎沖にいってみましょう」と船長。マダイが餌を食う条件は限られている。潮の動き、水温、濁り、これらの条件を魚が気にいらないと餌を口にしてくれないのがマダイ。しかし、好条件はいつ訪れるかはわからない、釣り人は常に緊張を持ってアタリに備えねばならない。

鴨居エビタイで愛用しているAmbassadeur 5500C。エビタイにはクラシックモデルがよく似合う。

 剣崎沖では中層狙いだ。春のマダイは時に底から10mも浮くことがある。また、小魚の反応の中にタイが潜んでいることもある。60〜70mの水深で、上から40〜50mに合わせアタリを待った。しかし、ここでも潮が効かず、アタリは来ないまま昼を過ぎた。

 残り時間は少ない、上げ潮に期待して鴨居沖に移動する。ここで初めて船長の竿が曲がったがタイの引きではない。苦笑いしつつテンヤに針ガカリしたスルメイカを抜き上げた。次に竿を曲げたのも船長で、今度は良型マサバ。本命のアタリはないが、海の中が活気づいてきた。

 時計は3時をまわり、沖上がりの時間も近づいてきた。そして、やっと私にアタリがきた。カツンとした明確なアタリに、反射的に竿を立てる。しかし、竿先は軽く跳ね上がったのみ。上げてみると餌のエビがまっぷたつになっていた。「タイかもしれない」と残念そうに船長。食い込みが浅かったか、あるいは小型のタイか…本命らしきアタリはこの一度だけだった。ほどなく3時半の上がり時間となり、マダイの型を見ることなく帰港となった。

 釣れないのでは面白くないだろう、読者の方々にはそう思われるかもしれない。一日辛抱してもボウズが珍しくはない釣りを、なぜわざわざやるのか?確かにコマセを使えばもっとアタリは多くなるだろう。しかし、この釣りでマダイを掛けた時の興奮や、釣り上げた時の喜びは、他の釣りには類を見ない満足感があると思う。

大型船で広々と釣りができるきよし丸。立地条件の悪さから客が少ないのが悩みどころ。船長の人柄と腕は抜群なので、みなさん遊びにいってあげてクダサーイ(^^;;;)

 潮の条件が合い、流す度にアタリが到来し、船上の緊張と興奮は極致に達する、そんなエビタイ釣りの魅力も私は何度か経験している。竿をダイレクトに引き絞る暴力的なマダイの引きの素晴らしさを知ることができるのもエビタイ釣りだ。これらの経験を忘れない限り、私は何度ボウズになってもエビタイ釣りに通い続けるだろう。

 冒頭で触れたように、エビタイ釣りに通う釣り人は減少の傾向がある。乗合宿も減り、現在では東京湾で数軒となった。それでも私は、エビタイ釣りの魅力を知る釣り人が一人でも増えることを期待したい。きよし丸では6月一杯はエビタイ乗合で出船し、その後タチウオに替わる予定だ。
 

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