初級者編
・包丁の錆びについて
・錆びを出さないためには
・錆びが出てしまったら
・
まず、大きく分けて和包丁と洋包丁に分かれます。和包丁はここで説明する、出刃包丁、刺身包丁、薄刃包丁など。洋包丁は牛刀、ぺティナイフなどですが、ここでは説明を省略します。この他に、中華包丁もあるのですが、これもここでは触れません。
さて、まずは和包丁を分類してみましょう。
出刃包丁 | 大出刃 | 七寸以上の出刃 |
中出刃 | 四寸〜六寸の出刃 | |
小出刃(アジ切り) | 四寸未満の出刃 | |
両刃出刃 | 兜割りに使う和包丁では数少ない両刃 | |
刺身包丁 | 柳刃(正夫) | 切っ先があり引き造りに適す |
蛸引 | 切っ先がなく平造りに適す | |
ふぐ引き | 刃身が薄い、薄造りに適す | |
相出刃包丁 | 相出刃 | 細身の出刃。五枚卸しに使う事が多い |
身卸出刃 | 相出刃より細長い。 | |
舟行 | 相出刃とほぼ同じ、マチがあるものもあり。 | |
薄刃包丁 | 鎌型 | 刃先が丸い。野菜用。 |
東型 | 刃先が角型。野菜用。 | |
その他 | うなぎ裂き | うなぎ専用。形は様々。 |
はも切り | はもの骨切り専用。 |
と、いきなり数多くの包丁の名前が登場して、初めての方は混乱しているかと思います。これらの特徴はここで覚える必要はありません。上の表だけでは違いの説明はあまりに不十分でもあります。まずは、「いろんな包丁があるもんだ」という事だけを認識してください。
釣り竿にも色んな種類があります。おおざっぱには、タイ竿、キス竿、イカ竿のように分類できますが、タイ竿にしても様々な長さ、調子があるわけです。いきなりこれらの細部から入っていっても理解するのは容易ではありません。ここは初心者向けなので、まずは全体の雰囲気を掴んでください。
包丁のサイズは「長さ」で表します。長さの単位は、尺と寸です。
例えば、
五寸出刃
八寸柳刃
五寸五分相出刃
という具合です。
この五寸とか八寸という長さは、「刃渡り」の長さのことです。刃渡りの長さは包丁の形状により若干測り方が違います。ここでは詳しくは説明しませんが、おおよその長さと思っていてください。当然長ければ長いほどサイズが大きな包丁になります。
これは簡単そうにみえて、難しい質問になります。「沖釣りをやってみたいけど、最初はどの竿とリールを揃えればいい?」という問いと一緒なのです。質問した人が沖釣りにハマるかどうか、どういう釣りが好みになるかで、ベストのチョイスは変わってくるのですが、将来を予測することはできません。
ここではあえて、「釣った魚を自分で料理して、ある程度本格的な刺身を造ろうという気持ちのある人」というように絞って、最初に揃える包丁をチョイスしてみます。
まず、2本の包丁を揃えてください。1本は出刃包丁です。これは、魚の頭を下ろす、身を三枚に下ろす、腹骨をすきとる、に使います。長さは五寸が汎用的でいいでしょう。釣る魚がシロギス、メバルなどの小物中心の人なら四寸の方が使いやすいと思います。
もう1本は柳刃包丁です。これは刺身を引くときに使います。また皮を引いたり、五枚に下ろして血合い骨を透いたり、ヒラメやアマダイのウロコを引くときにも使えます(これらは出刃でも可能です)。長さは八寸が将来的に飽きがきにくい長さかと思います。
基本的に、最初の工程では出刃を使い、最後の工程では柳刃を使うわけです。刺身を造るまでに、2本の包丁を使うことになります。
面倒だと思う人がいるかもしれません。であれば、一本の包丁で済ますのも良いでしょう。しかし、ここでは「釣った魚をより美しく料理する」という思想を盛り込みたいと思っています。2本の包丁は、そのための手間と考えてください。
気になるお値段ですが、無理に高価な包丁を買い求める必要はありません。実は包丁は高価になればなるほど、メンテナンスが難しくなる傾向があります。高価な包丁で難しいメンテナンスを失敗するよりも、普通の包丁で普通にメンテナンスを行う方がよく切れる場合が多々あります。
出刃も柳刃も、7000円〜12000円位のものを求めれば、飽きない限り5年、10年と永く使うに充分な品質のものが手に入ります。高くなくてもいいとはいえ、2000円〜3000円のものは、鋼の質が悪いのと、和包丁で最も大切な裏隙(別項で説明します)がないため、お勧めできません。
まるごとの魚をまないたに乗せて最初に握るのは出刃包丁です。魚によって捌く手順は違いますが、ここではマダイを例にとって説明します。
まずやることはウロコ落とし。これは出刃包丁を使ってもできますが、やはり専用のウロコ落としを使った方が飛び散るウロコが少ないので、ウロコを落とした後から出刃包丁の出番になります。
腹を裂く、頭を落とす、三枚に卸す、ここまでは出刃包丁の守備範囲です。三枚に卸した後は、腹骨をすく、五枚に下ろす、血合い骨をとる、皮を引く、になります。これは出刃でも柳刃でも可能ですが、私は出刃包丁でここまでの行程を済ませることが多いです。
皮を引いたら冊になります、あとは刺身を引くだけ。ここで刺身包丁にバトンタッチをします。
冊から刺身を引く、これはもちろん刺身包丁の首尾範囲です。刃渡りの長さを利用して、包丁を引きながら刺身を引きましょう。限りなく滑らかな切り口、に角がすっと立った刺身を引くのは刺身包丁の得意とするところです。
また、皮を引くのに刺身包丁を使うのもOKです。イカの糸造りのときなどは、柳刃包丁を使い、切っ先で細く作りましょう。
刺身包丁は、柳刃、たこ引き、ふぐ引き等があります。柳刃は「そぎ造り」に、たこ引きは「平造り」、ふぐ引きは「薄造り」が一般的ですが、まずはどれか一本を揃えてそれですべてまかなうので構いません。
刃を研ぐために砥石は必須。砥石はおおざっぱに分類すると荒砥、中砥、合わせ砥(仕上げ砥)の3種類に分かれます。これらは目の荒さによって分類されます。荒砥はもっとも目の粗い砥石、言い換えれば刃がおりやすい(削れやすい)砥石になります。合わせ砥石はもっとも目が細かくなります。
荒砥は、主に刃こぼれを直すのに使います。中砥は刃を付けるための主役です。合わせ砥石は研ぎ面をなめらかにし、刃を立てるのに使います。
家庭料理の本などには、まずは荒砥と中砥を揃える、と書いてあるものが多いですが、ツリオヤジは是非合わせ砥を揃えて欲しいです。荒砥はなくても構いません。まずは中砥と合わせ砥を揃えるのがいいと思います。というのは、合わせ砥をあてた後の刃の美しさ、これが研ぐ楽しみでもあるからです。霞包丁の地金と鋼の合わせ目がはっきりとわかり、鋼の部分は鏡面(ミラーフィニッシュ)に輝く。釣った魚を捌くのが楽しくなることうけあいです。
中砥は1000円から2000円くらい、仕上げ砥は2000円〜3000円くらいのものをまずは購入すればいいです。もっと高いものもありますが、砥石は消耗品ですから、まずは手頃な値段のものを求めて、包丁研ぎを始めましょう。
砥石の目の粗さは番目で表します。#1000(1000番)のように。番目が大きいほど目が細かくなります。中砥は#800〜#1000、合わせ砥は#3000前後のものをまずは使うのがいいでしょう。
面直し(つらなおし)とは、砥石を平らにする作業のことです。
「砥石は平らに決まってるじゃん」とお考えの貴方、さにあらず。砥石は平面に見えても、研ぎを重ねていくうちにくぼんでしまい、凹型になってしまうんです。中砥と合わせ砥を2丁持っている方、面と面を合わせてみましょう。隙間ができませんか?これは凹型になっている証です。これをまっ平らな面に直してやるのが面直しです。
和包丁の切れ味の良さは、刃が平面でクロスすること、そして、その刃を平面に研ぎやすいことからなります。刃を平面に研ぐには、砥石が平面であることが必要条件なのです。言い換えれば、きちんと面直しした砥石を使えば、誰でも包丁の切れ味を出すことが可能になります。
というわけで、包丁研ぎにおいて面直しは非常に重要な作業なのです。
面直しの方法はいろいろあります。金剛砥という硬い合成石でできた面直し専用の石も市販されていますし、紙やすりを貼って砥石をならす台もあります。一般的なのは、砥石と砥石を擦り合わせて平面を作る方法ですが、これは別項で詳しく説明します。
一部の料理本には、コンクリートに擦りつけて平らにするといい、と書かれているものもありますが、これは砥石の面を傷つけますし、砥石が欠ける原因にもなりますのでやらないでください。砥石は石といってもデリケートなもの、大事に扱いたいものです。