一番繊細なマダイ釣りかもしれない、シャクリひとつにコダワリまくるウィリーシャクリ

ウィリーシャクリとは?

フライ針のタイイング(巻き糸)素材として使われる、ナイロンの色ツキ糸がウイリーです。これを針に巻きつけたものがウィリー針、ウィリー針の仕掛けで、アミコマセを使って誘いながら釣るのが、ウィリーシャクリ釣りです。以前はコマセシャクリと表記されることも多かったですが、ウィリーシャクリとコマセシャクリは同じ釣りを指しています。
右写真はウィリー針。基本は大三元(383G,4P,W)だけど、緑一色(all 383G)も効果的で私の好みです。

ウィリーはアミコマセに似せています。いわゆる擬似針釣りで、コマセを使ったルアーフィッシングと思ってもらえばわかりやすいと思います。

道具立てを簡単に

この釣りはひたすら誘いを入れ、擬似針であるウィリーを魚に食わせます。なので、軽い短竿に小型の両軸リールが使われます。最近ではウィリーの専用竿が各社から発売されていますので、専用竿を選べば無難でしょう。リールはABUのAmbassadeurであれば6000番、SHIMANOであれば1000番サイズがちょうど良いです。道糸はPEの8号を使うのがベターです(理由は後述)が、PEの4-6号でも構いません。
右写真は野毛屋での釣果、ハナダイの他、イナダ、ショウサイフグなど多彩な魚が混じるのもこの釣りの特徴

コマセカゴはサニービシに限ります。この釣りはコマセの出をセーブし、少量のコマセを竿のアクションによって振り出すのが条件です。ステン缶やシャベルビシはコマセが出すぎるのをセーブできないため、この釣りには不向きです。

テンビンはなるべく腕の短いものがいいです。理由はコマセと仕掛けを同調させるため。絡み防止効果がスポイルされない限界の短さのものを選びます。テンビンの腕を切断して短くした改造テンビンを使う手練も多いです。

クッションは1.5mmで30cm。仕掛けは基本的に4本あれば十分。仕掛けのスペックも後述します。

釣り方を簡単に

釣り方はいろんなメディアに紹介されていますので、ここでは省略^^;;;;。
簡単にいうと、底までビシを落としてから底を切り、竿をしゃくりながら誘いあげてきます。このときに、コマセの中のウィリーに魚が食いつくわけです。
このときのシャクリ方がこの釣りの最大のポイントです。しゃくり方ひとつで、入れ食いになったりボウズになったり、残酷なほどの差がついてしまいます。
しゃくり方は一概には言えません。竿の調子、潮の速さ、魚の活性、ターゲット魚種、いろいろなパラメータで、ベストなしゃくりパターンが決まります。基本は仕掛けの枝間長のストロークで誘い、インターバルは1-2secというところです。

ハナダイ中心にマダイ、イシダイ、クロダイが主なターゲットですが、アミコマセを食べる魚であればすべての魚種に対応できる釣法です。

野毛屋

この釣りは、金沢八景の野毛屋を抜きにして語れません。 ウィリーシャクリの創世記から、さまざまな工夫をこの釣りにほどこし、現在の釣りを確定させたのは、黒川ブラザーズ(黒川忠雄船長、黒川勇治船長)です。現在は、忠雄船長は一線を退き、勇治船長と黒川俊之船長の2人が交代で、周年ウィリーのタイ乗合を出船しています。

私のウィリーの知識も、ほとんどが黒川船長と野毛屋の常連さん達から得たものです。以降、野毛屋発信のコマセシャクリのポイントを紹介していきます。

サニービシ下全閉、上窓1/3開

いまでこそ常識となっているサニービシの調整ですが、これが確立したのは10年ほど前と最近の話です。それまで試行錯誤状態であったコマセカゴ調整も、この方法が決定版となりました。上窓1/3はさらに絞るケースもありますが、これより開けることはまずありません。

道糸PE8号

これを使うようになったのは4,5年前でしょうか。当時の黒川勇治船長の話によれば、「アジの手ビシ釣りからヒントを得た」ということです。もともとは冬場から春先にかけてマダイやクロダイを狙うとき、小さなシャクリ幅で確実にコマセを出すことを目的としています。

道糸は潮の流れを受け、湾曲しながら底までおりています。つまり、竿とビシの間は直線ではなく、カーブを描いているわけです。この状態でしゃくると、力は100%ビシを動かすように働きません。つまり、ビシを動かす力のほかに、曲がった道糸を直線に戻す力が働くわけです。ビシを動かす力をVとし、道糸を直線にしようとする力をHとすると、Hがなるべく小さい方が同じしゃくり方をしたときに、コマセはでやすいわけです。

太い道糸ほどカーブは大きくなります。しかし、太い道糸はHが働きにくいのです。これは水の抵抗のためで、太い糸は曲がったままビシを引き上げるというイメージになります。この場合、太ければ太いほどいいことになりますが、あまり太いと湾曲が大きくなりビシ自体が潮で浮き上がってしまいます。サニービシ80号とのウェイトバランス(ビシに対する潮の抵抗も含む)で、(黒川船長の)経験則からベストと導き出されたのが、PE8号なのです。

使い比べてみると、確かにPE4号よりもPE8号の方が竿先に伝わる重さがシャープに感じられます。ぜひ試してみてください。

ここで大切なことは、なんでもかんでも太い道糸でHとVのバランスをとれるのか?ということですが、これは限定された船の流し方になります。すなわち、し下浦沖のように、船を根の上に止め(潮上に微速前進させて船の位置を固定する)、中層を狙う釣りの場合に限られます。潮で流す釣り(コマセダイなど)や、底を釣る釣り(スミイカなど)では、この方法は適用できません。糸に対する潮の圧力が異なるため、HとVのバランスが異なるからです。

この方法が適用できるのは、例えばイサキ釣り、アジのビシ釣りになります。私はイサキ釣りにもPE8号を使っています。もともと黒川船長がこの方法を見つけるヒントになったのもアジビシで、手釣りの渋糸だとコマセがでるが、竿で細い糸だとコマセがでないことからきているとのことです。

なお、太いPEの方が伸びが少ないから、と書いてあるのを目にしますが、これは間違いです。PEは非常に伸びが少ない糸で、4号でも8号でも、80号程度の負荷では伸びがないといえます、これは試してみれば一目瞭然です。余談になりますが、PE糸自体は使っているうちに伸びが発生します。これは編み糸のせいで、新品時の網みこみが、使っているうちに密になるため、結果として伸びたということになります(わずかですがメーターマークに誤差もでます)。使っているうちに伸びることはあっても、使っている最中にナイロンのように伸び縮みはしないのがPEラインの特性です。

と、長くなりましたが、経験則によるこの方法は、特に冬場には効力を発揮することを覚えておいて損はないと思います。

細ハリスは下火か?

ひところ、細ハリスブームがありました。標準は2号でしたが、1.7号や1.5号。はてには1号を使う人が増えました。しかし、現在では2号ハリス標準に落ち着いているようです。1号だと、イナダや良型のマダイが食った場合に簡単に切られますし、仕掛けの消耗が激しいです。私もひところは1号まで落としていたものの、昨年から2号を常用しています。

最近のトレンドは超小針?

こないだ取材にいって仕入れた情報は、チヌ針の0.6号を使うこと。私はチヌの1.5号か城ヶ島針小を使っていたため、この針サイズを使うのがいいとには正直驚きました。「それじゃカワハギ釣りじゃん。針折られるでしょ?」と言ったんですが、小針の場合には口の裏にまっすぐ刺さるので、針が伸ばされることは少ないとのことでした。さっそく私もチヌ0.6号(金龍Hライン)で仕掛けを作り直してみましたが、イシダイが釣れただけなので効果の確認は今後の課題です。しばらくは0.6号でやってみようと思ってます。

でぶウィリー、やせウィリー論争には結論か?

針にウィリーを巻く太さ、これはずいぶん昔から細いほうがいい、いや太いほうがいい、と論議されていた問題です。これは「細いほうがよい」と結論つけられた雰囲気があります。巻くときにウィリーを束ねる数は2本。これを一往復くらいでスリムに仕上げます。このほうがアミコマセのイミテーション効果に優れるということです。4本で巻くのはNG。ただ、これはまだまだ異論があるかもしれません。

まだまだ書き足りないけどこのへんで^^;;

各論に入ってしまい、この釣りの経験のない方にとっては読みにくい文章になってしまいましたが、この釣りを体系だてて説明すると膨大なボリュームになります。最後にこの釣りの楽しさを挙げておくと、まず、工夫が活かされる釣りであること、技術が生かされる、つまり上達が顕著に現れること、ただし、パラメータが膨大なため、釣れた日があっても次回は不調というのはざらで、プラトー・スランプ状態があること。その分、釣ったときの喜びは倍増されること。ターゲットが多彩なこと、ライトタックルのため、釣趣が高いこと、いろんな釣りに応用できる要素がてんこ盛りなこと、などがあります。
基本技術は確立されていますが、トレンドは微妙な変化をみせ続けていますので、また機会があれば別に紹介することにします。

2002.01.16 Yasuhiro Ii

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